非正規雇用の定義・分類と実態について、まとめてみました。
1 短時間労働 
2 有期契約雇用
3 間接雇用

T<定義・分類>
1 短時間労働・パートタイム労働者の定義
(1) 短時間労働者 
@「週35時間未満」(総務庁「労働力調査」)
A「1日の所定労働時間が一般労働者より短い者あるいは1日の所定労働時間が同じであっても1週の所定労日数が一般労働者より少ない者」(「毎月勤労統計」、「賃金構造基本統計調査」)
=@、Aには短時間就労の正社員も含まれる。派遣社員も含まれる。

(2)「勤め先の呼称がパートである者」(=「呼称パート」、「正社員でない者」という意味
で用いられている実態)(「就業構造基本統計調査」、「労働力調査特別調査」)
    =「長時間就労のパートタイム労働者」を含まれる。

(3)パート労働法(「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」)
「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者より短い者」

2 期限付き雇用・有期労働契約の分類
(1)総務庁「労働力調査」では、 
臨時雇:「雇用者のうち1か月以上1年以内の期間を定めて雇われている者」
日雇 :「雇用者のうち日々又は1か月未満の契約で雇われている者」

(2)労働省「有期契約労働者に関するアンケート調査」(平成11年10-11月)
  パートタイマー:事業所でパートタイマーとしている者のうち有期労働契約の者
          (正規社員と勤務時間が同じかそれ以上のパートタイマーを含む)
  臨時雇:臨時的・季節的な業務量増加に対応するため、臨時的に雇用している者で、
正社員と1日の所定労働時間及び1週の所定労働時間が同一の者(期間工、
季節工等)
  契約社員:専門的又は特定の職種に従事させることを目的に、期間を定めた契約に基
づき雇用している者(嘱託等を含む)
  その他有期:有期労働契約の者で、パートタイマー、臨時雇、契約社員のいずれにも該当しない者(アルバイト等)

3 間接雇用
(1) 派遣労働者の定義
労働者派遣とは「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする。」
派遣労働者とは「事業主が雇用する労働者であって、労働者派遣の対象となるもの」。

U<実 態>

1 パートタイム労働の実態
厚生労働省「パート労働の課題と対応の方向性?パートタイム労働研究会の中間とりまと
め報告?」(2002年4月5日)より
 http://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/02/h0205-2.html

短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成5年法律第76号)(パート労働法)にいうパートタイム労働者とは、「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常
の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者」となっており、以下においても基本的にはこの概念をもってパート労働者と呼ぶ。ただ、もう一つ統計的な概念として、「勤め先の呼称がパートである者」というとらえ方がある。これらの中には短時間労働者でない者も相当数含まれており、一般的に「パート」という概念が短時間労働者という意味だけでなく、「正社員でない者」という意味で用いられている実態があることを示している。パート労働問題を考える上で、この現実も無視することはできないので、以下ではこうしたとらえ方についても視野に入れて検討することとする。


ここで、「パート労働者(ここでは週35時間未満雇用者)」と「勤め先の呼称がパートである者」の関係を整理すると、数的にはどちらも1100万人前後であるが、前者のうち2割は正社員や派遣等、後者のうち3割は35時間以上であり、800万人弱は両者が重なっている部分となっている(図表1)。
総務省「労働力調査」によれば、平成12年の週35時間未満非農林雇用者は1,053万人(うち女性754万人)で、非農林雇用者中に占める割合も2割(女性では36.1%)に達し、20年前の昭和55年の約1割(390万人)から大きく上昇している(図表2)。また、「呼称パート」は1,129万人で非正社員の8割強を占めているが、景気後退期における正社員と非正社員の増減のパターンをみると、従来は景気後退期でも正社員の増加は続いており、非正社員の増加が抑えられるという形で調整がなされてきたが、今回ははじめて正社員が大幅に減少する一方で、非正社員は大幅に増加しており、明らかにパターンに変化がみられる(図表3)。

 産業別にみると、「卸売・小売業、飲食店」(364万人)、「サービス業」(339万人)、「製造業」(163万人)の3業種に8割以上が集中している(図表4)。ここ10年の変化を各業種におけるパート比率でみると、特に卸売・小売業、飲食店で上昇が著しい(図表5)。既存の業態におけるパート比率の引上げに加え、外食産業やコンビニエンスストアなどパート・アルバイトを多用する新しい業態の登場・成長も反映していると考えられる。

 企業規模別にみると、約4割が1-29人規模で働いているが、ついで多いのは500人以上規模で約2割となっている(図表4)。ここ10年の変化を各規模に占めるパート比率の推移でみると、特に1000人以上の大企業で上昇が著しく、10年前は7%弱だったパート比率が約3倍の2割弱にまで上昇している(図表6)。

 職業別にみると、サービス、販売、事務で7割弱を占めているが(図表4)、ここ10年の変化を各職業におけるパート比率でみると、特に労務作業、サービス職業などでの上昇が著しい(図表7)。

2 有期契約雇用の実態
労働省「有期労働契約の反復更新に関する調査研究会報告」(2000年9月)より
http://www2.mhlw.go.jp/kisya/kijun/20000911_01_k/20000911_01_k.html#gaiyou

本研究会は、第一の検討事項である「有期労働契約の反復更新に係る実態の把握及び分析」の基礎資料として、「有期労働契約者に関するアンケート調査」*3を実施した。同調査は、有期契約労働者の雇用状況の把握と二次調査対象事業所の抽出のために、まず企業を対象とする一次調査を行い(12,600社に実施し、有効回答は7,193 社。以下「企業調査」という。)、その後二次調査として、有期契約労働者を雇用している事業所に対する調査(6,000事業所に実施し、有効回答は1,788事業所。以下「事業所調査」という。)及び事業所調査対象事業所に勤務する有期契約労働者に対する調査(各事業所4人、計24,000人に実施し、有効回答は5,106人。以下「労働者調査」という。)を行った。
  以下、主にその調査結果に基づいて、我が国の有期契約労働者の現状や有期労働契約の更新、雇止めの状況について分析を行う。

2?1 有期契約労働者の雇用状況

<有期契約労働者は非農林業雇用者の11.9%>
我が国の労働者のうち、有期契約労働者は、どの程度の割合を占めているのであろうか。
 就業形態別の雇用者数について、総務庁統計局「労働力調査」*4でみると、非農林業雇用者 5,298万人のうち、定義上有期契約労働者とほぼ一致すると考えられる臨時雇及び日雇は、それぞれ510万人、121万人(平成11年)おり、あわせて非農林業雇用者全体の11.9%を占めている。この比率は10年前(平成元年:10.6%)に比べ 1.3%ポイント上昇している。

<企業の7割で有期契約労働者を雇用>
企業調査で有期契約労働者の有無をみると、有期契約労働者を雇用している企業は全体の69.0%と、約7割の企業で有期契約労働者を雇用している。ただし、有期契約労働者を雇用していない企業に対して、今後の採用意欲を聞いたところ、「雇用する予定」3.3% 、「雇用するかどうか検討する」25.8%に比べ、「今後も雇用しない」が70.2%と高く、現在有期契約労働者を雇用していない企業における今後の採用意欲は必ずしも高くない。

<有期契約労働者を雇用している事業所の6割でパート、契約社員を雇用>
事業所調査で有期契約労働者の雇用形態別の雇用状況をみると、パートタイマーを雇用している事業所が61.6%、契約社員59.5%、臨時雇15.0%、その他有期13.8%となっており、パートタイマーと契約社員は多くの事業所で雇用されている。
また、事業所調査対象事業所における労働者構成比をみると、有期契約労働者の占める割合は 16.6%(パートタイマー9.0%、臨時雇1.7%、契約社員4.1%、その他有期1.7%)である。

<有期契約労働者の半数はパート、4割は契約社員>
労働者調査における有期契約労働者の属性をみると、次のとおりである。
有期契約労働者の雇用形態別の割合は、パートタイマー49.0%(うち短時間パートタイマー37.3%、長時間パートタイマー11.7%)、契約社員41.1%、臨時雇 6.0%、その他有期 3.4%となっている。全体の半数がパートタイマーであるが、契約社員も約4割を占めている。
 職種についてみると、有期契約労働者全体では「事務職」が38.5%と最も多い。
雇用形態別には差がみられ、パートタイマーは「事務職」が47.6%と最も多いが、臨時雇は「技能工、製造・建設作業職」が38.2%と最も多く、契約社員は「事務職」(29.1%)に次いで「専門職、技術職」(19.2%)が多いのが特徴である。
 また、その他有期では「事務職」(36.0%)に次いで「サービス職」(18.0%)が多い。
 男女の比率をみると、有期契約労働者全体では男性35.7%に対し女性64.1%と女性の方が多い。ただし、雇用形態による差が大きく、パートタイマーでは女性が86.8%を占めており、特に短時間パートタイマーでは90.9%が女性である一方で、臨時雇では男性が52.6%、契約社員では男性が60.4%と男性の方が多くなっている。
 年齢については、有期契約労働者全体では、60?64歳が18.9%であるほかは、どの年齢層(20歳未満?70歳以上までの5歳刻み)も10%程度となっている。ただし、契約社員では、60歳以上の者が42.8%とかなり多く、職種も60歳以上では専門・技術職、管理職の割合が高い(60?64歳37.4%、65歳以上35.8%)のに対し、29歳以下の者(17.7%)については事務職の割合が高い(53.8%)。
税込み年収をみると、雇用形態による差が大きく、契約社員は年収 500万円以上の者が17.4%を占めているなど相対的に高くなっている*5。
 有期契約労働者の生活費の主な収入源についてみると、有期契約労働者全体では自分の収入である者が45.7%、配偶者の収入である者が39.8%となっている。
 これを雇用形態別にみると、短時間パートタイマーでは自分の収入が主である者は16.2%にとどまっているのに対し、長時間パートタイマー(45.7%)、臨時雇(60.5%)、契約社員(71.3%)では自分の収入が主である者が多くなっている。
 なお、その他有期については、親の収入が主である者が22.7%と他の雇用形態に比べ高い。

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2?2 企業が有期契約労働者を雇い入れる理由及び雇用調整時の位置づけ

  <有期契約労働者を雇用する理由は「人件費節約のため」が多いが、雇用形態に
   よるちがいも少なくない>
事業所調査で有期契約労働者を雇用する理由(複数回答)をみると、「人件費節約のため」を挙げた事業所がパートタイマーで67.6%となっているほか、臨時雇42.5%、契約社員32.3%、その他有期30.1%と有期契約労働者の各雇用形態に共通して高い割合となっている。しかし、人件費節約以外の理由についてみると、雇用形態により異なっており、パートタイマーでは「1日・週の中の仕事の繁閑に対応するため」(41.1%)、臨時雇では「臨時・季節的業務量の変化に対応するため」(57.8%)、契約社員では「専門的な能力を活用するため」(49.6%)及び「経験等を有する高齢者の活用のため」(44.6%)が多い。
 なお、有期契約労働者の今後の活用について事業所調査でみると、「現状維持」がほぼ半数を占めるが、その他の回答をみると「一層積極的に活用していきたい」が「今後は活用を縮小していく方向で検討している」を上回っている。*6

  <過半数の事業所は雇用調整を有期契約労働者から行うと回答>
経済的事情により必要になり雇用調整の人員削減を行う場合、人員整理の対象については、有期契約労働者と正規社員を区別しないとする事業所が31.9%と少なくない一方で、有期契約労働者から先に行うとする事業所が54.0%と、有期契約労働者の立場が不安定であることがうかがえる。

2?3 労働者が有期労働契約を締結する理由

  <有期労働契約を積極的に選択した者は3割、消極的に選択した者も3割>
一方、労働者が有期労働契約をどのように受け止めているかについて、労働者調査で有期労働契約を選択した理由をみると、「その他」と回答した者が33.4%と少なくないことや、雇用形態等により差異があることに留意する必要はあるが、「望んだため」とする者が29.5%(臨時雇では35.6%とやや高い)、「やむなく」が34.1%(長時間パートタイマーでは39.0%とやや高い)と、いずれも約3割となっており、積極的に有期労働契約を選択した者の割合が消極的な選択をした者の割合を若干下回っている。なお、年齢別にみると、60歳以上では「やむなく」の比率が低く(60歳代21.2%、70歳以上11.5%)、「望んだため」の比率が相対的に高く(60歳代37.1%、70歳以上42.3%)なっている。


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3 有期労働契約の更新・雇止めの状況
 3?1 有期労働契約の更新に関する状況
<有期労働契約を更新する場合には、平均4?6回の更新により4年程度の勤続>
事業所調査で、有期労働契約を更新する場合の平均的な更新回数をみると、パートタイマー6.4回、臨時雇5.9回であるのに対し、契約社員は 3.8回、その他有期は 3.7回と差があるが、契約社員の契約期間はパートタイマーや臨時雇に比べ相対的に長いことから、平均勤続年数はパートタイマー4.3年、臨時雇3.9年、契約社員4.2年と、その他有期(2.5年)を除き約4年となっている。また、契約を更新する場合に事業所が想定している有期契約労働者の勤続年数は、その他有期で3.3年とやや短いのを除き、他の雇用形態では5年程度となっている*18。

<契約を更新された労働者は6?7割、その場合の平均更新回数は6回>
労働者調査で、実際に有期労働契約が更新されたかどうかをみると、現在の勤務先で更新されている者が68.1%となっており(調査時点で更新されていない労働者についても、期間満了時に更新される可能性はある。)、更新されている場合の平均更新回数は6.4回となっている。
また、以前の勤務先で有期労働契約を「会社が更新してくれなかった」または「初めから一定の更新回数が決まっており、当該回数に達した」ために当該契約の更新ができなかった労働者(以下「過去に雇止めの経験がある労働者」という。
*19)について、以前の勤務先での有期労働契約の更新状況*20をみると、1回も更新されなかった者が29.4%、1回以上更新された者が59.2%となっている。1回以上更新された者の平均更新回数は6.1回となっている。

<更新の判断基準としては、「労働者の勤務成績・勤務態度」「本人の意思」などが多い>
事業所調査で契約更新をするか否かの判断理由(複数回答)をみると、総じて「労働者の勤務成績・勤務態度による」「本人の意思による」「期間満了時の景気変動などに対応した仕事の量による」の割合が高くなっている* 21。ただし、契約社員では、「必要な能力を持った人材かどうかによる」の割合が50.1%と、他の雇用形態では2?3割であることと比べ高い一方、「期間満了時の景気変動などに対応した仕事の量による」は37.4%と、他の雇用形態では約半数を占めているのに比べ低い。
また、更新回数や勤続年数について上限を設定している企業は1割以下とわずかであるが、年齢については、約4分の1の企業で雇用の上限年齢を設定している*22。

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