2002年「連合通信・隔日版」No.7282
・給与、最大の減少/5月の毎勤統計
厚生労働省が七月一日発表した毎月勤労統計調査(速報)によると、基本給・家族手当・超過勤務手当などを合計した今年五月の労働者一人当たりの定期給与は前年同月比で一・八%減少した。超過勤務手当を除いた所定内給与も同一・六%減で、ともに一九九〇年の調査開始以来最大の下げ幅となった。
定期給与の減少について厚生労働省は「賃金カットが所定内給与に及んでいる可能性がある」と指摘している。(後略)
・パート均等待遇どう実現/超党派議員がシンポ開く/ガイドラインでは不十分
超党派の国会議員などによる「パートタイム労働者等の均等処遇を実現するシンポジウム」が七月一日、東京で開かれ、約百人が参加した。連合の林誠子副会長、日本経団連の紀陸(きりく)孝常務理事、中野麻美弁護士を招き、正社員とパートとの均等処遇をどう実現するか話し合った。
主催したのは「パートタイム労働者等の均等処遇を実現する議員連盟」(会長 大脇雅子参院議員、五十四人)とシンポジウム実行委員会。同議連は民主、共産、社民、自由など超党派の国会議員が今年四月に結成した。厚生労働省のパートタイム労働研究会が七月に出す「最終報告書」に均等処遇原則を盛り込ませようと、活動している。
「最終報告」は均等処遇については法律では基本原則を示すのにとどめガイドラインで補う方向を打ち出すと見られる。討論で三氏は均等処遇の必要性では一致したものの、立法化をめぐっては意見が分かれた。
紀陸氏は公正に処遇できない企業に人材は集まらないとしつつ、「正社員の評価だけでもむずかしいのが実情」「会社も仕事もさまざまな中で、画一的なガイドラインはできない」と述べた。「政労使の役割は均等処遇のきっかけづくりだ」とも指摘、個別企業で推進する姿勢を強調した。これに対して、中野氏はガイドラインだけでは不十分とし、「法律に均等待遇や労働時間差による差別禁止などのルールを盛り込む」べきだと強調した。(後略)
・均等待遇で意見書/パート議連
同議員連盟は七月一日のシンポジウムで「パートタイム労働研究会『最終報告』への意見書」を発表し、厚労省へ申し入れた。
意見書は賃金や福利厚生などで不合理な格差をつけられた非正社員が急増していると紹介。均等処遇実現には「労働時間の違いを理由とする差別的取り扱いの禁止」など六点を「早急に立法化することが不可欠」と述べている。そのほかの五点は、(1)有期契約を理由とする差別的取り扱いの禁止(2)ライフスタイルに合わせて、フルタイム・パートタイム労働の双方向の「転換」を可能とする制度の整備(3)法的、制度的整備は民間のみならず公務部門においても講ずる(4)ライフスタイルの選択に対する中立性を保つよう税制・年金制度を改定(5)ILO(国際労働機関)第一七五号(パート労働)条約、第一一一号差別待遇)条約の早期批准
・学卒未就職者への支援強化を/日高教などが提言発表/「養成訓練」拡充など
若者がもっと仕事につけるようにしよう、と日本高等学校教職員組合など関係する労組・団体が政策提言をまとめ、このほど発表した。学卒未就職者に対する支援を強めるため、形がい化しつつある「養成訓練」制度の抜本的拡充と求職活動手当の支給を打ち出している。七月九日には提言発表を兼ねたシンポジウム(東京)を開く。
提言をまとめたのは、「高校・大学生、青年の雇用と働くルールを求める連絡会」(就職連絡会)。日高教のほか全労働や首都圏青年ユニオン、日本青年団協議会、日本母親大会連絡会など十五団体が参加している。
厚生労働省の調査によると、今春卒業した就職希望の高校生の事前の内定率は前年を下回る八九・七%だった。一割強が就職できなかったことになる。フリーターの激増が社会問題となり、ものづくり技能・技術の継承も危ぶまれている。日本の将来にとっても若年層の就職難打開が大きな課題だ。
提言は緊急政策と基本政策の二本立て。雇用確保の緊急政策では、新規学卒者を対象に設けられている養成訓練の科目と受講定員を拡充し、費用の無料化と受講中の求職活動手当支給を求めている。養成訓練は基礎技術や技能を習得させるのが目的だが、予算や定員が少ないのが現状。(後略)
・野宿生活者の実情調査/NPOや大阪労連/自治体に雇用対策要請へ
失業者の自立支援や仕事おこしのボランティア活動をおこなっている「NPO関西」(建交労関西支部と協力関係)と大阪労連のメンバー三十人は七月二日、大阪城公園に野宿生活者を訪ね自立支援のアンケート調査を行なった。
野宿生活者が居住する大阪城公園のブルーシートテントは不況の長期化やリストラ解雇の増加で三年ほど前から急激に増えはじめ今では千張りを超えている。自立のための仕事と住居の確保が行政に求められているが、対策の遅れから放置されているのが現状だ。
「七カ月前からここで暮らしている。リストラで失業。一年半求職活動したが就職できず、家族もバラバラになった。アルミ缶や銅線回収で月数万円の収入」(四三・男性)、「一年半になる。ホテルマンをしていたがリストラに。市内に四人兄弟がいるが、連絡はしていない。炊き出しの一日一食だけ。こんなにやせた。仕事はしたいが自立支援センターの仕事も二百人に対し四千人も応募し、いつも抽選で外れる」(五六・男性)、「姉の息子を頼って大阪に来たが、邪険にされここに住み着いた。姉は空き缶回収、私は賄いで一年働き少しお金もたまったので、もうすぐ出ていくつもりだ」(七〇と七三歳の姉妹)
アンケートは六十二枚集まった。五月に行なった同様のアンケート(男性五十二人・女性二人)によると、五十歳代が三十人と最も多い。野宿生活のきっかけはほとんどが倒産・解雇・リストラで、三年以上野宿している人が四割。仕事はアルミ缶回収が八割で月収入は二?三万円程度が平均。三割の人が健康状態が良くない。(後略)
2002年7月3日「JIL労働情報」No.221
【行 政】
◆ 年齢にかかわりなく、能力を発揮して働ける社会の実現を?厚労省報告
厚生労働省の「年齢にかかわりなく働ける社会に関する有識者会議」は6月27日、年齢に過度に偏りすぎた雇用システムから、能力を評価軸として、多様な能力を最大限活かせる働き方を選べる雇用システムへの円滑な移行を進めるべきだとする中間報告をまとめた。年齢差別の禁止については、「導入の是非」、「導入する場合の時期・条件等」について、さらに国民的合意の形成に努めていくことが必要だとしている。
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/06/h0627-1.html
◆地方圏で雇用の政府依存度が拡大?財務省研究報告
財務省は6月27日、それぞれの都道府県で財政支出が地域の産業競争力や雇用創出に果たしてきた役割を研究した報告書「都道府県の経済活性化における政府の役割」を公表した。地方圏で雇用の政府依存度が高く、90年代に依存度の格差がさらに拡大したが、国や地方の財政が悪化する中で、もはや財政支出に頼った地域活性化は期待できないので、住民、企業、自治体が一体となった雇用戦略が求められているとしている。
http://www.mof.go.jp/jouhou/soken/kenkyu/zk059.htm
【統 計】
◆製造業の所定外労働時間、15カ月ぶりプラスに?毎月勤労統計
厚生労働省が1日公表した5月の毎月勤労統計(速報)によると、所定外労働時間は、前年同月比2.5%減と15カ月連続の前年割れであったが、このうち景気判断の指標となる製造業の所定外労働時間は同0.4%増と15カ月ぶりに前年水準を上回った。きまって支給する給与は前年同月比1.8%減の27万6,237円であった。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/14/1405p/mk1405p.html
【報 告】
◆低所得者はどうやって家計を運営しているか?
イギリス経済社会研究所は1日、「低所得者はどうやって家計を運営しているか?」と題するレポートを公表した。これによると、家計収支を合わせることが困難な状態のときには、柔軟性の点などから、たとえ金利が割高であっても、政府機関からの借り入れよりも、民間や友人、親戚等からの借入を第一に選択するとしている。
http://www.esrc.ac.uk/esrccontent/news/july02-1.asp
2002年7月2日「連合通信・隔日版」No.7281
・悪化する失業率5・4%/5月/失業者は14カ月連続増
総務省は六月二十八日、五月の労働力調査を発表し完全失業率(季節調整値)が五・四%(前月比〇・二ポイント増)になったことを明らかにした。失業率悪化は五カ月ぶり。完全失業者数は三百七十五万人(同二十七万人増)に達し、十四カ月連続で増えた
●雇用対策を手抜き/連合
連合の草野忠義事務局長は「雇用創出など抜本的な雇用対策に手を抜いてきた政府の対応の誤りを示したもの」と指摘する談話を発表した。デフレ経済に歯止めをかけ雇用不安を解消する責務を果たすよう、政策転換を政府に求めた。
今国会で補正予算を組んで雇用維持・創出、失業者の再就職と生活支援、ワークシェアリングなどの施策を実施すべきだと呼びかけている。あわせて、労働分野の無原則な規制緩和の動きを見直し、ワークルール確立を急ぐことなどを訴え、「政策を転換することが急務であることを重ねて主張する」と強調している。
●人減らしが原因/全労連
全労連の坂内三夫事務局長は談話を発表し、「政府のいう日本経済『底入れ』には全くほど遠い実態」と指摘した。深刻な雇用・失業状態の打開こそ圧倒的多数の労働者・国民の切実な要求であり、「国政上の最重要課題」だと訴えている。 談話は「大企業を先頭とする身勝手な人減らしとそれを支援する政府の労働分野での規制緩和策」が深刻な雇用・失業状態をもたらしていると批判。政府に対して(1)大企業のリストラ・人減らし計画の取りやめ指導、労働時間短縮での雇用拡大(2)公務・公共部門での政府計画による雇用創出などの実施を求めた。
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